お話を受け「トップの熱い想い」と「人事システム」が、まさに車の両輪であることを改めて実感させていただきましたが、その「マネジメントのシステム」として同社のノウハウがつまっているのが『日産V-upの挑戦 カルロス・ゴーンが生んだ課題解決プログラム(中央経済社)』です。
この本では全社レベルの問題解決手法であるV−upプログラム(会社の業績に貢献する課題を設定し、クロスファンクショナルに編成されたチームが、有効性が実証された手法を活用しながら課題を効果的に解決していくプログラム(p.25))についての考え方、ノウハウが紹介されています。
同書では本プログラムが発足する以前の日産を「モノづくりの現場には方法論が確立されているが、管理間接部門には方法論が確立さえていない(p.27)」としています。
クリステンセン(2001)は組織の能力に関し、組織にできることとできないことは、3つの要因によって決まるとしています。まずは人材、設備、技術、商品デザイン、ブランド力、情報、資金、供給業者、流通業者、顧客との関係などの「資源」。次に、従業員が資源のインプットを価値の高い商品やサービスに変換するときに組織は価値を生み出しますがこの時の相互作用、協調、コミュニケーション、意思決定のパターンなどの「プロセス」。そして最後に仕事の優先順位を決めるときの基準である「価値基準」の3つです。クリステンセンは資源―プロセス―価値基準の枠組みにより組織能力を説明しており、日本企業においてグローバル化やダイバーシティに関しては「価値基準(経営メッセージ)」や「資源(採用)」が先行し、「プロセス」即ち組織マネジメントが追いついていない状況だと私自身は感じていますが、日産のV-upプログラムは、まさに経営者のメッセージ(価値基準)を受けた、多様性に富む社員(資源)が、新たな価値を生み出すプロセス(組織マネジメント)を実現する手法といえます。
非常に分かりやすく丁寧に書かれているので、組織マネジメントにおける戦略執行や課題解決に興味のある方にはお勧めの一冊です。
一点、留意事項として挙げるとすればあくまでも、トップによる継続的なメッセージ発信とプログラムの実施の2つで効果を発揮するため、経営のコミットや継続的な支援なしでのプログラム導入では成果はえられない、ということでしょう。

